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島本町では、島本町広瀬の水無瀬家に伝わる古文書類について、今後の保存と活用を図るため、令和5年度から5年間の予定で水無瀬家所蔵資料調査を実施しています。
町内に伝わるこれら文化財への興味・関心を広げ、文化財保護への理解を深めていただくことを目的に、令和5年度の調査で明らかになった一部資料について、町立歴史文化資料館での展示を通して公開するとともに、関連講座として、古文書調査の流れを簡単に解説する説明会や調査現場を垣間見る機会を提供するための講座を開催します。
★展示期間=第1期:令和6年10月17日(木曜日)から10月31日(木曜日)まで
第2期:令和6年11月 1日(金曜日)から11月17日(日曜日)まで
第3期:令和6年11月19日(火曜日)から12月8日(日曜日)まで
★開館時間=午前9時30分 から午後5時まで (最終入館は午後4時30分)
古文書調査の流れを簡単に解説するほか、実際の調査現場を紹介します。
★令和6年10月20日(日曜日)
午前の部 午前11時00分から、午後の部 午後2時00分から
(それぞれ30分程度)
(包紙)
【写真】後鳥羽院六百回忌次第 1紙 天保8年(1837)頃 個人蔵
本品はおそらく天保8年に作成された「後鳥羽院六百回忌次第」で、僧侶がお経を唱えるまでの
行程がつぶさに記されており、遠忌(おんき、没後に長い期間を経て行われる法会)の執行にあ
たって先例を重視する様子をうかがい知ることができます。
(後装表紙)(旧仮綴表紙)
【写真】水無瀬兼成自詠自筆 詠草集 1冊 慶長7年(1602)頃 個人蔵
水無瀬家のなかで著名な人物と言えば、水無瀬兼成(1514-1602)を思い浮かべる方が
多いと思います。能筆(のうひつ、文字を書くのが上手なこと)であった兼成が銘を記した
将棋駒は「水無瀬駒」と呼ばれ、島本町有形文化財に指定されています。
本品は、兼成自筆の詠草集(えいそうしゅう、和歌と漢詩の草稿を綴ったもの)で、
文禄2年(1593)5月、兼成80歳の年から亡くなる半年前の慶長7年3月2日に至るまでの、
和歌79首・漢詩17韻(いん)が書き留められています。
展示の箇所は、慶長5年(1600)8月21日、彼岸の中日(ちゅうにち)に出家する際、京都
の嵯峨にある二尊院(にそんいん)で、兼成自身が主君の後陽成天皇(1571-1617)に
奏上(そうじょう、天皇に上申すること)した和歌とその返歌が記されています。
【写真】木製文台 1基 天明7年(1787) 2月寄付 個人蔵
文台(ぶんだい)とは歌会などの会席で、短冊・懐紙(かいし、和歌を書き留めた紙)
などをのせる台のことを言い、会席の中心・象徴となるものです。この文台が納めらた
木箱の蓋表には、公家衆や大名家への献上品として知られる銘木「阿武隈川埋木」
(あぶくまがわのうもれぎ)の墨書があります。
【写真】箱表墨書(文台収納木箱)
「文臺/阿武隈川埋木」
【写真】箱裏墨書(文台収納木箱)
「天明七年二月/冷泉民部卿為泰卿寄附」
【写真】三条公輝 自筆 和歌懐紙 1紙 昭和初期 個人蔵
作者である三条公輝(1882-1945)は尊王攘夷派(そんのうじょういは)の公卿(くぎょう)
として知られる三条実美(1837-1891)の三男で、当時、御歌所(おうたどころ、宮内省の
部局。1888年に設置、1946年に廃止)の所長を務めていた人物です。
【翻刻文】
「秋日侍官幣大社水無瀬神宮/大前同詠水辺菊 和歌/
御歌所長公輝/秋ごとにみやこわ/すれもさきいでゝ香に/
匂ふらむまのゝい/里江二」