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島本町の文化財を知っていただくために、企画展や刊行物に掲載することができなかった話などを連載していくことといたしました。
連載テーマなども統一せず、不定期で更新していきます。
今回のテーマは、以前にも紹介しましたが、本町で実施している水無瀬家所蔵資料調査の近世和歌資料を紹介いたします。
前回、前々回は「懐紙」に記された和歌の変体仮名を見てきました。今回は、「短冊」に書かれた変体仮名を読んでみましょう。
その前に、「懐紙」と「短冊」について簡単に説明したいと思います。
懐紙とは、本来、懐(ふところ)にいれて携帯する紙のことで、着物が普段着だった時代、いつも懐に入れて持ち歩き、ティッシュペーパーや便箋、メモ用紙などとして利用していました。
現在では、懐紙を見ることが少なくなりましたが、会席料理や茶道の席などで使用されているのがしばしば見られます。
この懐紙ですが、鎌倉時代頃から、歌会で使用する紙のことを「懐紙」と呼ぶようになり、そして最も大きなサイズの懐紙を全懐紙と言います。
前に紹介した和歌は全懐紙に記されていますが、その一般的な大きさに決まりはないものの、おおよそ縦1尺2寸(約36cm)×横1尺6寸(約48cm)と言われています。それに対し、全懐紙を長手で8等分し、幅2寸(約6cm)に整えたものを短冊と言います。
では、現在調査中の水無瀬家所蔵資料の中の和歌から江戸時代中期に記された短冊の文字を読んでいきましょう。短冊の上端には、この和歌の題である「藤」(ふじ)が記されています。
初句は「おしまるヽ」で字母である「於之末流ヽ」をくずした変体仮名が見られます。
そして、三句には和歌の題「藤」の漢字も見えます。
以下に和歌の翻刻文を掲載します。前回紹介した和歌よりも難しいかもしれませんが、写真の和歌の文字と見比べてみましょう。