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今回は発掘調査において掘削の際に使用する道具を紹介します。
発掘調査に関する仕事に携わっていると、「根気有りますね!刷毛で掘っているのでしょう?」とよく言われます。
確かに刷毛を使用することもありますが、実は最後に少し使うぐらいで、スコップなどを使用して土を掘っていく作業がほとんどです。
発掘調査で使用する道具は、正式な名称以外にも通称で呼ばれているものも多く、その通称も東日本と西日本で異なるとも聞きますが、今回紹介する名称は島本町周辺で呼ばれているものです。

(発掘調査道具集合写真)
上の写真の道具が、主な掘削道具ですが、右から
1 鋤簾(じょれん)
2 角スコ(かくすこ)
3 剣スコ(けんすこ)
4 バチ(ばち)
5・6 ガリ(がり)/手ガリ(てがり)
7 お玉(おたま)
8 スコ(すこ)/手スコ(てすこ)
9 曲げスコ(まげすこ)/まがり
10 竹べら(たけべら)
11 刷毛(はけ)
と呼ばれています。
1 鋤簾
鋤簾は、本来は農業などの際に、土をかき集めて畑の畦などを作る際に使用するものですが、発掘調査で使用する際は、刃先を研いで、土を削るための道具として使用されます。
鋤簾だけではなく、スコップなどの刃がついている道具は、しっかりと研いで、掘るのではなく、土を切るという感覚で使用しています。

(鋤簾写真)

(鋤簾使用状況写真)
2 角スコ
土をすくって運ぶ際に使用するスコップであり、正式名称は角スコップというものです。次に紹介する剣スコと比べて、先の形状が四角いことから、角スコと呼ばれています。角スコは、土を運ぶだけではなく、壁や平面を大まかに平らに削る際にも使用します。

(角スコップ写真)
3 剣スコ
スコップの先の形状が尖ったものであり、正式名称は剣スコップというものです。土を大きく掘る際に使用するスコップであり、重機が届かない場所や掘り残しの土を削る際に使用します。
発掘調査は、遺跡を壊さないよう重機での掘削は、遺跡の深さより少し上で止めなければなりませんが、その掘り残しを掘削する際に活躍する道具です。

(剣スコ写真)

(剣スコ使用状況写真)
4 バチ
バチと呼ばれる片手で持って使う道具です。鍬のように、土の塊を砕く際に使用しますが、鍬だと土に深く刺さり、遺跡を傷つけてしまうため、片手で扱える幅広な刃がついたバチが使用されます。

(バチ写真)
5・6 ガリ/手ガリ
5・6は、発掘調査の道具としては両方ともガリと呼ばれるものですが、刃部分がもっと大きく、鋤簾ほどの長さの柄がついた大ガリと呼ばれるものもあるため、5・6のように片手で扱うものは手ガリとも呼ばれます。正式名称は5が三角ホー、6が半月ホーというものであり、本来は草刈りなどに使用されるものです。
このガリが発掘調査中に、もっとも多く使われる道具かもしれません。発掘調査では、土を削って、壁や平面を平らにする際に使用するものであり、鋤簾や角スコ後の仕上げ作業に用います。
地面を掘るというよりは、スライスするという感覚で使用するものであり、仕上げ作業で使うものであるため、使用した場所を踏み荒らさないように後ろにさがりながら、使用していきます。
また、遺構を傷つけないよう、少しずつ削りながら、掘り進めることができるため、遺構を掘る際にも、ガリが使用されます。

(ガリ写真)

(ガリ使用状況写真)
7 お玉
料理用のお玉ですが、柱穴の中の土を取る時などに使用します。和食用のお玉のように柄が柔らかいものではなく、中華料理用のもののように柄が硬いものが最適です。お玉以外にも、食事用のスプーンなどを使用して、土を取ることもあります。

8 スコ/手スコ
単にスコとも呼ばれますが、角スコや剣スコに対して片手サイズのスコップであることから、手スコとも呼ばれます。また、正式名称は、スコップや移植ゴテと呼ばれるものです。
主に、柱穴などの遺構を掘削するのに使用します。
9 曲げスコ/まがり
8のスコを自分たちで曲げたものであり、このような製品が売られているわけではありません。7のお玉のように、柱穴などの中の土を取る時に使用します。

(スコ・曲げスコ写真)

(曲げスコ使用状況写真)
10 竹ベラ
竹を削って、ヘラ状にしたもので、自作することが多いです。主に、土器の出土状況を撮影する前に、土器の周りの土を取り除いて、土器の輪郭を綺麗に出す時などに使用します。
特に呼んでいる名称はありませんが、竹べらの左においてある金属製のものを使用することもあります。

(竹ベラ写真)

(竹べら使用状況写真)
11 刷毛
冒頭で述べた刷毛ですが、これは竹べらなどで土器の輪郭を出した後、土器の上にこぼれた土の塊を取り除く時などに使用します。
写真撮影前の最後の仕上げとして使用されることが多く、発掘調査の取材を受けるときも、一番きれいに遺構の状況が見えるこの作業の前後に撮影されることが多いので、発掘調査は刷毛で掘っているという印象を持たれるのではないでしょうか。

(刷毛写真)

(刷毛使用状況写真)
上記の道具が、発掘調査の主な道具ですが、それぞれの人や地域によって道具が異なってきます。人によっては、柄の長さや刃の形状などを加工する人もいます。
遠目では、発掘調査をしているのか土木工事をしているのか、見分けがつきにくいかもしれませんが、使っている道具の違いによって、発掘調査をしているのか、土木工事を行っているのか、見分けがつくようになるかもしれません。
また、これらの道具の多くは、ホームセンターなどの園芸コーナーに置かれているものです。作業着姿で園芸コーナーの品を物色している人は、もしかしたら発掘調査の関係者かもしれません。